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マイクロフォン シュートアウト 座談会

Bock Audioマイクロフォンの魅力

関根青磁 x 松本良喜 x 山下絵理(ellie)



Bock Audioは、過去の偉大なマイクロフォンに比類するスタジオマイクを現代の技術とコンポーネントを使って製造することで知られています。そのラインナップの魅力とはいかなるものなのか。グラミー受賞レコーディングエンジニア、関根青磁氏と、ふたりのボーカリスト、松本良喜、山下絵理(ellie)、両氏に協力をいただき、プロボーカルレコーディングによく知られる新旧マイクロフォン達と共にシュートアウトを実施。それぞれのマイクの印象や感想を語っていただきました。


座談会に先立ち、シュートアウトが行われたマイクは、以下


Bock Audio 251
Bock Audio 47
Bock Audio 49
Neumann M49c(vintage)

Bock Audio IFET(Vモード)
Neumann U67(vintage)
SONY C-800G
Neumann TLM103


Bock Audio のラインナップと、比較用のヴィンテージM49、松本氏のリファレンスとしてU67、ellie氏のリファレンスとしてTLM103、現代マイクのリファレンスとしてC-800Gを加えてシュートアウトは行われた。





── Bock Audioラインナップの全体的な印象はいかがでしたか?

関根:率直にいいですね。オールドの良さを現代に引き出している印象です。すごくオリジナルのキャラクタの追い込みができている。僕はその中でもBock 47が男性、女性ボーカル問わずとても印象が良かったです。オリジナルのNeumann U47は有名なアーティスト達が使用しているマイクですが、とても歌い手を選ぶマイクです。そもそも日本にあまり数がない上、状態の良い個体となるとさらに数が少ない。実は少し前にも3本くらいヴィンテージU47を試してみたのですが、どれもあまり良いものがありませんでした。それを考えると今日シュートアウトしたBock 47は、聴いてきたオリジナルのU47よりも全然印象が良い。今日のオケは、ミックス、マスタリング済みのような音源でしたが、その中でもしっかり歌が前に出てきました。通常は音圧のあるオケですと、コンプ、EQ、リバーブの処理をしないと歌が乗りにくいのですが、SSL GのHAからダイレクトに録っているだけにもかかわらず、ここまで存在感があるのは強みですね。

松本:Bock Audioのマイクは、どれも歌が前に来ます。マスタリング済みのようなオケだと歌が全然前に出て来ず、本当に埋もれてしまう。普段のレコーディングで使うことも多いヴィンテージU67も比較のひとつにありましたけど、Bock 47の方が全然良かった。声を張ったところでも余裕がありましたね。今日は、ちょうど自分のスタジオで買うことを想定しながら試していたんですけど、その中でもBock 251の印象がとても良かったですね。僕の声は、下を切らないとダーと膨らんでしまうので、これくらいナローに落ちているくらいがちょうどいい。

関根:Bock 251は、最初声だけでチェックした時は、上がパリッとしていて、下が足りないマイクかなという感じでしたが、オケの上に歌を乗せてみたらとても良いマイクでした。セッティングで試していた時は、まさか(松本)良喜が気に入るマイクとは思いませんでした。

ellie:Bock Audioのマイクは、柔らかくて包容力がある感じがしました。ヴィンテージのマイクは雰囲気を録るものなのかな。劇判とかクリスマスソングとかで、雰囲気や距離感が浮かんでくるイメージです。SONY C-800Gは、歌が聴きやすくて歌詞が入ってきますね。

関根:90年代、00年代のJ-POPのボーカルに、SONY C-800Gが使われることは本当に多かったですね。音数が多いガチャっとしたオケの中でも歌が残りやすく、日本語が良く聴こえることが大きかったです。

松本:でも僕は、C-800G全然好きじゃないんですよね。(笑)





── 普段M49をボーカルに使うことはありますか?

関根:あります。M49は高域がナローなマイクですが、クラシックロックとかのオールドスクールなサウンドのアーティストにすごくハマるマイクですね。Bock 49はM49のレプリカとしてもすごくよく出来ていると思います。ヴィンテージのM49よりもレンジが広いので、ボーカルだけでなく、ストリングスのアンビエンスに使うのによいし、コントラバスやチェロにハマることも間違いないと思いました。Bock 49は耐圧があるのでドラムのオーバーヘッドにも安心して使えそうですね。

IFET(Vモード)は、今回、選ばれなかったけど、“これしかない”という状況なら全然問題ないマイクでした。FET( コンデンサー)マイクは、オケに入ると埋もれがちですが、マイクプリやコンプに真空管の機器を使うなどして対処する方法もあります。ただ僕はIFETの元になっているU47fetで、歌の録音に成功したことはないので(笑)、あえてボーカル用として使ってもよいですが、楽器に使うことを優先して考えた方がいいマイクだと思います。

── 関根さんは、FET(コンデンサー)マイクでボーカルを録ることはありますか?

関根:昨今プロのボーカルレコーディング現場で、ファーストチョイスにU87が置かれることはあまりありませんね。U87に限らず、パッと聴いて印象のよいFETマイクがあったとしても、オケに乗せた時には埋もれてしまう。波形やレベルが同じであってもオケの中で前にくる、後ろにくるということが起きる。もちろん絶対とは言えませんが、ボーカルは真空管のマイクで録るのが主流ですね。行くスタジオに特別マイクの指定をしていない時は、とりあえずU67が立っている事が多かったりします。Neumann U87、U67、M269はマイクの外観は同じで、M269はU67よりハイエンドが伸びているのが特徴です。U87は真空管マイクであるU67のFETバージョンの位置づけ。昔、東芝EMIスタジオはU67多く所蔵、ビクタースタジオはM269を多く所蔵していたりと、それがスタジオのカラーにもなっていたりします。当時のエンジニア達の判断なんでしょうね。真空管機材は存在感を上手にコントロールして扱う必要がありますが、ボーカルが最後までオケに埋もれないことが大事。それが真空管の魅力です。





── ellieさんは、様々な現場でやりやすさの違いを感じることはありますか?

ellie:マイクによって歌いにくいとかはないんです。どのスタジオ、現場でも返ってくるモニターの音は違うので、片耳外して体の感覚で歌えるようにしています。私自身が、環境によって左右されるのが嫌というのもありますね。ボーカリストとしてのレコーディングの現場は、こう歌ってほしいという指示をいただくことが一番で、自分の意向は二の次なので、全然お任せで大丈夫です。ただ、今日のテストで、ヴィンテージマイクは、気配、立体感というか、自分の声だけじゃない周りの感じや人の雰囲気が録れていると感じました。現場の雰囲気というのは常々大事だなと思うことがあるので、きっと録れてる音にも影響があるんだろうなと思います。

関根:良いボーカルパフォーマンスには、その場の雰囲気はとても大事ですね。スタッフはスタジオ代が!と思うかもしれないけど、歌い手さんがブースに入る前のアイドリングタイムはとても必要です。そのための精神論は有効。例えばマイクだと、フラムを真正面に向けると吹かれるので、少しアングルつけてセッティングをしますが、ボーカリストの感覚の話でフラムをまっすぐ狙いたいと言われることがあったりします。マイクを上からセッティングしていると圧迫感があって嫌だという人もいます。雰囲気作りで照明を暗くしたりすることもあるし、そもそも窓がないスタジオが嫌だという人もいます。昔、氷とグラスとお酒と灰皿をブースに用意することもありました。甘いお酒の方が喉によいから杏露酒でって(笑)。タバコのふぅーというのがイントロに入っていたり。レコーディング日のアーティストは、お姫様、王子様。ボーカルレコーディングは、技術的な側面もあるけど、歌い手さんがいかに気持ちよく歌えるかがとにかく大事ですね。

松本:確かにいいぞと、よいしょしてくれた方がやりやすいです。萎縮したままで良いパフォーマンスはできない。ボーカルは、何かを使ってよくなると信じて歌うと、実際によくなることがあるくらい感覚的なものに左右される。初めてのアレンジャーとやるときなんかは、どうしても気を使ってしまいますね。

ellie:罵声ばかりの現場とかは、嫌でしたね。笑いの一つでもないとブースに入りたくないみたいな(笑)。それでもやりますけど(笑)





総評

関根:今日のシュートアウトは、二人がデュエットしたら混ざりがよいかもというくらい真逆のボーカルキャラクタで良かったです。二人の声でそれぞれ251、47、49の特性をよく表していました。欲をいうとオケとの兼ね合いもあるので、どれかひとつの一番合うマイクというより、この曲はこのマイク、この曲はあっちのマイクとセカンドチョイスくらい持てた方が良いですね。

松本:そうですね。僕は、作家、アレンジャーとしてスタジオにいることが多いので、マイクは、曲調に合わせてというところもある。自分が歌うときは、70sのソウルとかが好きとか、自分の作品への好みも入ってくる。ただ、今日のテストで、ヴィンテージマイクが新しいBock Audioのマイクより勝っているとは思わなかったし、むしろBock Audioのマイクの方が、前に出てくれてすごくよかった。自分のスタジオで使うとなるとスタジオの予算やメンテのことも考えてしまうので、ヴィンテージマイクで揃えなきゃ、というのはなくなりましたね。今回のシュートアウトに参加できて本当によかった。

ellie:それぞれのマイクに個性豊かな音の特徴があって、声質とか、声量、曲調によってもそれぞれ良さが引き立ったりして面白かったです。日々レコーディングに呼ばれていても、こういう機会じゃないと全然知ることができないことなので、今日はとても勉強になりました。

関根: いままでいくつか個性的なキャラクタのマイクが流行ったことがありましたが、他のマイクに浮気しても戻ってくるのがヴィンテージの魅力。251、47、49、67などのサウンドは、50、60年と使われ続けてきて飽きがこない味がある。現行のNeumannのラインナップがヴィンテージマイクのサウンドを供給している訳でもないので、高騰したヴィンテージマイクの代わりになる新しいマイクにニーズがあるのもわかります。僕は好きでヴィンテージ機器と付き合っているところもありますが、ヴィンテージマイクのSNの悪さを嫌がる人もいるし、個体差があるのでステレオで揃えることも難しい。メンテナンスのリスクも当然ある。Bock Audioのマイクは、昔ながらのヴィンテージマイクのスタンダードフォーマットを引き継いでいる新品のレコーディングマイクとして普通にプロに勧められるキャラクタとクオリティーがある。今回のシュートアウトでは、今の技術でこのクラスの真空管マイクを作ったらここまで行けるんだという発見でもありましたね。



PROFILE

関根青磁
レコーディングエンジニア。1994年、ビクタースタジオに入社。2000年よりフリー。m-floやSMAP、布袋寅泰 などを手掛ける。カニエ・ウェスト「Stronger」のレコーディングに参加し、同曲がグラミー賞で部門賞を獲得。最近ではウルフルズ、カノエラナなどのセッションに参加している。

松本良喜
日本の作曲家、編曲家、シンガーソングライター。山梨県出身。東京音楽大学作曲科中退。所属事務所はスマイルカンパニー。2003年第45回日本レコード大賞作曲賞受賞。

山下絵理(ellie)
シンガーソングライター、ボーカリスト。山下絵理ソロ名義でシンガーソングライターとして新たな世界を発信し続ける中、ellie名義でもフィーチャリングボーカリストとしても様々なアーティストの作品に参加。リリースされた作品は90を越え、その歌声は絶大な人気を誇る。
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