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Bock 251 ユーザーインタビュー

ファーストコール・マイクロフォンの条件

古賀健一 x タカハシ翔一



渋谷から半蔵門線で20分のところに位置する水天宮に新しくオープンしたレコーディングスタジオ、水天宮VOLTA Arca Studio。このスタジオの顔となるマイクロフォンにBock Audio 251が選ばれています。レコーディングエンジニア、古賀健一氏と、スタジオオーナー、タカハシ翔一氏に、このスタジオのコンセプト、そしてBock 251の魅力についてお話を伺いました。


── 新しいスタジオのコンセプトを教えていただけますか?

古賀:エンジニアにとって使いやすい、ミックスとミックスチェックがしやすいスタジオがコンセプトですね。ここは、もともと作曲家の方が持っていたプライベートのスタジオだったこともあり、そのままで外貸しができる状態ではなかった。スタジオの音響の調整にかなり手を入れて今のところまで持ってきました。YAMAHA NS-10Mは、まだあってほしいという声があるので別として、とりあえず今はDYNAUDIO AIR6を置いて、いろんなモニタースピーカーを試しているところです。

タカハシ:スタジオを居抜きの形で一年くらい前に引き取りました。DIYで少しずつやって2月にやっとWEBをオープンしたところです。改修を進めて行きながら少しずつ外貸しを増やしていきました。最初、水天宮というロケーションに抵抗がある方もいたんですが、渋谷から半蔵門線で20分のところなので一度来ていただくと慣れていただけますね。このDYNAUDIO AIR6のモニターは暫定としているものの、この状態でもとてもよい音で鳴っているので、お客さんからはめちゃくちゃミックスがやりやすいと評判をいただいています。

古賀:DYNAUDIO AIR6じゃなくても自分のスピーカーを持ってきて貰えれば、この”ミックスチェックがやりやすいスタジオ”というコンセプトはすぐに分かってもらえると思います。音響調整は、まだやれることがたくさんあるんですが、まずこのDYNAUDIOから偏見なく聴いてみてほしいですね。





── このサイズとは思えない広いレンジ感と明瞭なフォーカスが見事ですね。

古賀:自分のプライベートレコーディングスタジオではミックスしながら部屋の音を整音をしていくんです。ミックスがやりにくいとなったらスタジオの音響を調整する。これをずっと繰り返していたら、やりにくかった周波数をクリアにさせるのが早くなってきて、何ヘルツが気になるから、これくらいの吸音層と吸音材を用意してくればとか、これくらいの空気層でなんとかなるから、ここの壁を壊してしまえばとか(笑)、だんだんわかるようになってきました。その、いろいろやっていったノウハウをここのスタジオに投入しています。

── 途方もないお話のようにも聞こえますが、どのようなゴールを設定していますか?

古賀:良いミックスがしたいんです。自分自身が納得して、お客さんが納得して、何年経っても色あせないミックスがしたいと思って試行錯誤していったら最終結論が部屋の調整になってしまったんです。これをやらないと自分のミックスができないのでやっているという感じですね。アナログの時代とは違い、今はリバーブの切れ際とか、0.1dBのEQのさじ加減がとてもシビアなので、自分が理想とするミックスには調整された部屋の力が不可欠でした。モニタースピーカーの話もよいんですけど、僕が言っているのは部屋の解像度の方です。ここは天井にそれなりの高さがあって、よい形と広さとがあったので音の追い込みはやりやすかったです。ふつう、スタジオは一度完成すると音響調整はよほど大きなタイミングじゃないと行われないので、これをエンジニア発信で常に更新するスタジオというのは面白いかなって思ってやっていますね。





── Bock Audio、Soundelux のマイクを揃えていますね、どのような意図がありましたか?

タカハシ:もうひとつのスタジオのコンセプトとして、ボーカル・レコーディングに特化したかったというのがあります。だから看板になるBock 251を買って、Soundelux のマイクを揃えたんです。これらのマイクと歌を合わせられるように幾つかマイクププリの種類を置いています。U87Ai、M149などのマイクも置いていますが、基本ヴィンテージマイクが揃う必要があれば老舗のスタジオに行くという選択肢があるので、ここではモダンなマイクを揃えるようにしていきたいんです。

古賀:昔、アシスタントだった頃に、Soundeluxのマイクを聴いたんですが、圧倒的な抜けがあってそれは衝撃的でした。それからデビッド・ボックが作るマイクに興味を持つようになりましたね。僕が独立してフリーランスになったとき、全て機材が揃っている状態から何もなくなりました。そこで最初に買ったマイクが、カプセルを変えられていろんな音が録れるBlue Bottle。しばらくは、それでどうにかしていたんですが、どうしても忘れられなかったのが251の音なんです。オリジナルのELA-M251や、リイシューの251はとても人気があってよく使われていました。あるとき、ハイエンドなTUBEマイクを一同に試す機会があったときにBock 251を聴いて、これだ!と思いましたね。





── Bock 251の印象とはどのようなものでしたか?

古賀:コンプを掛けなくても歌が前に出る。低音が伸びている。上が伸びているのではなく、下が伸びている感じ。重たくない自然な低音。それでいて抜けが良い。251の名前があるレプリカでも、押し出し感や力強さが表現できていないもの、ヴィンテージっぽさを意識してかレンジが狭すぎてカチカチしているものもあります。少なくとも5本以上ヴィンテージの251と、幾つかあるリイシューの251を聴いていますが、ヴィンテージにどこまで似ているかという視点では、正直、全部音が違うので何が正解なのかはわからない。けれどもBock 251は、いろんな251を知っている中で、”251”の好きなところの良いイメージを持っている。これは”251”として、この値段を出す価値があるなと思いました。

僕は、ロックバンドを録ることが多いですが、まずこのマイクがオケの中で負けてしまうことはないですね。マイクから離れるとほとんどのマイクは細くなっていってしまうんですが、Bock 251は、離れても音像がまったく細くなっていかない。とっても失礼な言い方をすると、あまり上手ではないボーカルの方でもしっかり録れます。僕は、ボーカル・レコーディングの際、歌い手の方に選択肢を与える為に必ず2本のマイクを立てますが、その採用率はダントツでBock 251です。これはアーティストが認めていることで、僕が勝手に良い音のマイクと言っている訳ではないんですよ(笑)

タカハシ:僕もエンジニアさんにマイクの提案を求められたら、Bock 251を立てています。必ずよい反応が返ってくる、間違いのないマイクですね。

古賀:ハイ上がりのすっきり系マイクは、近年どんどん採用率が下がっています。僕らは、低音は切らないと言葉が聞こえないと教えられてきましたが、低音は絶対に切ってはいけない。むしろEQで低音を上げます。ただ EQであげられる低音は遅い。遅い低音はいらないので、EQで上げられる低音には限界があります。今の時代は、質の良い低音を録れるマイクじゃないとダメだと感じています。 Soundelux USA U195、U99にFATモードのスイッチがある理由も良く分かりますし、なぜ、ここに新しい音響調整されたミックススタジオが必要なのか、それもこのことに密接な関係があるんです。





── 最近、Bock 251を使って録られたタイトルはありますか?

古賀:先日、リリースされたASIAN KUNG-FU GENERATIONのベスト盤、BEST HIT AKG2に一曲だけ、新曲の”聖者のマーチ”という新曲があって、そこでBock 251を使って録っています。もともと少しバラード調の曲だったのでGefell M92を持っていったんですが、結局、そのときもABテストの結果、Gotchさんが持っているBock 251で録ることになりました。





3月にリリースしているD.W.ニコルズのアルバム『HELLO YELLO』は、一曲、雰囲気の違う曲に他のマイクを使っていますが、それ以外は全部Bock 251で録っています。MVが公開されている「はるのうた」も、Bock 251ですね。このアルバムは整音した自分のスタジオでミックスも担当させていただいて、ひとまず今、理想にしているところの追い込みができたかなと思っています。





── スタジオのこれからの予定はありますか?

古賀:ブース側の天井とのフラッターと横幅と天井幅の関係に良くないポイントがまだ多いので手を入れようと思っています。あと、本当のところ僕はBock 251が2本ほしい。ゆくゆくは弦カルテットや、ブラスも良く鳴るようなスタジオにしてステレオでアンビにも使いたい。でも今は、まずダビングですね。ギターアンプなんかも狭いブースに入れて録ると低音がボケてしまいますけど、これくらいの余裕あるスペースのブースだといきいき鳴ってくれます。

タカハシ:ここはどちらかというと新しいロジックのスタジオなので、若いエンジニアに気軽に使ってもらえるようにしていきたいですね。最初のスタジオ(中野VOLTAスタジオ)の方も、このスタジオで知り得た知識を使ってアップグレードしているところです。






水天宮VOLTA Arca Studio: voltarecs.com
VOLTA Studio: voltastudio-rec.com

古賀健一: righttracks.jp/fellowship-of-righttracks/...