LEARN - Soundelux USA U99


User Interview - 清水淳一





楽曲提供、音楽制作、効果音、ボイス収録まで、ゲーム、アミューズメント全般のサウンド開発を請け負っている制作会社、ココロノビートエンターテインメント代表取締役、清水淳一氏は、Soundelux USA U99ユーザーです。サウンド開発の最前線にて選ばれるその魅力について伺いました。


── こちらでの制作業務について教えてください。

仕事は、主にゲーム、アミューズメント全般のサウンド開発、という仕事になります。音楽と効果音、SEを作って、ゲームに使われるボイス(セリフ)を収録する。うちはまだ請け負ったことはないんですが、実機への実装作業などもサウンド開発に含まれます。弊社はゲーム機やアミューズメント機などで鳴る音に関連するものを一括して引き受けており、音楽だけ、効果音だけというオーダーもありますが、まとめての案件も多いです。メインで動いている8人の会社スタッフは、専門以外の守備範囲も広く、ボイス編集などの作業をやっているかと思えば、歌ものの楽曲提供を行っていたり、業務は多岐に渡っています。効果音制作に強く、楽曲制作にも強い、さらに収録と編集もできるというところはなかなかないので、クライアントさんからは重宝していただいています。


── ご自身のバックグラウンドを教えていただけますか?

以前は、ゲーム会社でサウンド制作の仕事をしていました。ゲーム会社に入るまでは、ジャズギタリストを目指していました。ジャズの勉強をしているうちに、ジャズスタンダード曲の多くは昔の映画音楽だということに気がついて、その曲が使われている映画などを観るようになったんで す。音楽主体で映像作品を見るようになると、「この映画の後ろで流れている曲は好きだな」「この会社の音楽とは趣味が合うな」と、劇伴音楽(BGM)へ次第に興味を持つようになりました。その中で音楽の仕事を考えた時に、「ギターを弾く仕事をするなら、自分で曲を書いた方が早い、音楽の勉強をしながら仕事ができるのでは」と思い始めました。また、日本のアニメやゲームの仕事への関心も持ち始め、、そちらも見るようになりました。そして当時放映していたアニメに感動して、そのゲームの原作の会社にDTMで作った初作品を応募してみたら受かってしまったんです。それが24歳の時で、エンジニアリングやDTMは当然ゲーム会社に入ってから勉強しました。覚えていかなければいけないことがとても多かったですし、一人でやる仕事が多すぎて、勉強するのが苦手な人には大変な仕事だと思います。ここでは、それまでの人生で、厳しくストイックに音楽を教えてもらった師匠達に鍛えていただいていたことが本当に役に立ちました(笑)。そこからは、自分は“こうなりたい”というイメージが明確にあったので、それを達成するために何が必要なのか、自分が作りたいものを作る為には何をクリアして行かなければいけないのかを考えて、目の前にある必要なことを一つ一つ一生懸命クリアしていったら今に至った、という感じです(笑)。


── こちらのスタジオについて教えてください。

制作、録音、それから整音、音楽でいうところのマスタリングまでの、ゼロから最後までを基本的に全部社内で行っています。外のスタジオに行くことはほとんどありませんね。ここで収録するのは、ボーカル、ボイス、アコギ、エレキギターのリアンプや、ブースにはKAWAIの古いアップライトピアノもあるので、ピアノもここで録音しています。リコール、リテイクが必要となりそうな楽曲などは、ソフト音源を使って制作することが多いですが、録音するのとはやっぱり違う。音の太さ、弦が重なっている感じ、共振されて一体になっている感じとか。低域と高域が一緒に鳴っているところがよく再現されている音源もありますが、本物を弾いたものに比べるとまだまだ違います。未だピアノソロなどでは生音とは替えが効かないです。ギターもまた不確定要素が多く打ち込みで対応できない楽器です。“雑な”楽器ほどソフト音源で再現するのが難しいので、ボーカル、セリフと合わせて楽器のレコーディングもよく行っています。


──マイクロフォンは、どのようなものを使ってきましたか?

AKG C414、AT4040、Neumann U149、U87Ai、TLM103などを使ってきました。どちらかというと、仕事的によそのスタジとの差異がないように、これがあれば安心と思われる定番的なマイクを選んでいました。長いことやってきて周りを見ると、もっと個性的なマイクや、定番以外のマイクを使いこなしている方もいらっしゃるので、自分自身も今の仕事にもっと適したマイクがあるんじゃないかと色々調べるようになったんです。その後、一度、ブティック的な高級マイクをたくさん並べて試してみたことがあるんですが、キャラクターが強すぎたり、派手で好きだけど自分の仕事には合わないな、となったりして、結局その時は、定番の”87”がやっぱり業務上では安全かな、という結論で終わってしまいました。


──清水さんの仕事に必要なポイントとはどういうところだったんでしょう。

僕の仕事は、楽曲のボーカル録音もありますが、声優さんのナレーション、ボイス収録がとても多いんです。多い時は数十人の声優さんが入れ替わり立ち替りでいらっしゃったりするのですが、一人当たりの収録時間は決まっていて、香盤表(タイムスケジュール)通りにすべてをちゃんと録りきらなければいけない。そうなると転換の時間が本当にないので、声優さんの声や、演技に合わせてマイクを選んだり、セッティングを変えている余裕は全然ないんです。なので、一本のマイクですべての演者さんのボイスをちゃんと録りきれることが重要です。”87”というマイクはこういった状況に合っているマイクだと感じますが、それでも問題はあって、男性と女性の声で質感が結構変わってしまうなと感じるんです。特に女性の声、そして甲高い声や叫び声なんかでは、高音にピークがあって、非常に痛い音になってしまう。また、音源との距離感の変化が出やすくて、演技によっては体が動いたりするので、声の距離感が変わってしまう。僕はそこが気になりました、質感や距離感を一定の枠の中に捉えてくれるマイクの方が良いと思っていましたので、決して87一本ですべての演者さんのボイスを録りきることができていた訳ではなかったんです。

今回それらの問題を解決するマイクを求めて、いままでの87系のマイクと、その真空管モデルである67系のマイクに焦点を当てて、様々なマイクを試しました。声の中心をしっかり録ることができて、様々な人の声の良さを拾うことができる、マイクのキャラクタがありながらも一本で柔軟に対応することができるマイク。これらを相当シビアにテストした結果、唯一クリアしたマイクがあった。それがSoundelux USA U99だったんです。


──どういうところにその差を感じたのでしょうか。

いくつか決め手となったことがありました。ボイスの処理で『音量感を揃える』という仕事があるのですが、ボーカルにしても、ボイスにしても、音量感をコンプやEQだけで揃えていくには限界があって、倍音感や中音域の質感や密度感も、音量感が整って聞こえるためには重要です。真空管マイクであるU99は、真空管タイプらしく倍音が多く含まれているので、小さい音でもしっかりと音量感が出て、セリフごとに音量差があっても音量感が揃ってくれます。また低音、中域がしっかり録れる。これは、いろんな人、いろんな演技を、音量感を揃えながら録っていくためにはとても重要なポイントです。基音のある中低域がしっかり出てくれると、音量感が整いやすいからです。今回試したその他の真空管67タイプのマイク達は87と同様に高音にピークがあって、これまでの87と同様の現象が起きてしまいました。高音にピークのある派手な出音のマイクというのは、波形を揃えていっても、周波数の凹凸で音量感が揃わないので、録音した後の処理も大変です。対してU99では、囁いても、大きな声でしゃべっても、トゲトゲしさが出ないだけでなく、演技での声の変化や、マイクとの距離の変化における音量差がさほど気にならず、聴感上の音質や音量感バラツキが少ない。それまでとても苦労して平らにしてきたのが嘘のように、まろやかにキレイに収められるんです。派手な出音のマイクは、バックにオケがあることが前提に音作りがされていると思うので、ボイス収録には向いていないのかもしれないなと感じました。それからSNが良いのも非常に魅力的です。ボイスの場合はバックに音が何もないので、ノイズが非常に目立ちやすいため、フロアノイズができるだけ少ない方が嬉しいんです。なのでSNの良さは非常に重要なんです。また、ボイスの後処理にiZotopeのDe –NoiseとDe-Clickを掛けてノイズを処理するんですが、U99の音だとなぜかその効きもとても自然で、変な掛かり方をすることが非常に少なく、細かく調整していく必要があまりない。数千、多い時は一から数万という膨大な数のボイスを扱うボイス編集の仕事では、こういう細かな利点もとても大切なポイントです。ですのでこのマイクは声素材へ非常に特化していると思います。


──キャラクタの好みではなく実用上の理由だったということでしょうか。

キャラクタももちろんとても気に入っていますが、業務上の利点が多いというのは決め手の一つですね。マイクのチョイスは僕の好みだけではなくクライアントさんにも関係することなので、購入を決める前に様々なマイクを並べて、音響監督数名に音を聞き比べていただいたんです。そうしたら演技のニュアンスがしっかり録れているという理由で、全員一致でSoundelux USA U99の音が選ばれました。人気ゲームの音響監督をされている方が、「このマイクのほうが、”声で大事なミッドがしっかり録れていて、ちゃんとニュアンスが伝わっていいね”」とおっしゃって、自分が感じていた印象とも一致していました。そういった職人たちの耳に気に入られた、というところも大きいです。



程度のよいヴィンテージマイクが持つ聞き取り易さと説得力、新しさが同居しつつ、価格がヴィンテージ品のように高すぎない。誰もこれが30万円のマイクとは思わないでしょう。いままで、とあるスタジオさんが録られたボイスの音がすごく好きで、それに近くづくことができず悩んでいましたが、U99で、ようやくその音に近づくことができました。ゲーム会社で制作をやっていたからかもしれませんが、最終的な受け取りをする人、やはりユーザーの反応をみて嬉しいというのはあります。今はそれがクライアントさんになるので、聞き取り易く、人の感じがある質感を共有しながら仕事ができるようになったことが何より嬉しいですね。




ボイスサンプル



U99を使用した台詞の音質チェック用ボイスサンプルです。 マイクの音質やSN比を純粋にチェックできるように、EQ、COMP、フロアノイズの除去など一切せず、マイクとSHADOW HILLSのMONO GAMAマイクプリのみ使用。マイクプリのトランスは味付けの少ないニッケルを選択しています。 音質が変わってしまうポップガードも使用せず、薄いウインドスクリーンのみでのレコーディングにしました。ポップガードを使用していないため、リップノイズが目立ちがちでしたので、唯一リップノイズのみ除去。音質が変わらないように丁寧に細かくリップのある部分のみを、RX6で一つ一つ選択してリップを取り除く処理を行っています。
インタビュー中に出てくる、ダイナミクス幅や帯域の高低差の振れ幅がある男性のボイスと、高域が痛い音で録れがちな女性のボイスをチョイスしてみました。

声優プロフィール
おおしたこうた(レゴ ニンジャゴー ジェイ役など、アニメやゲーム多数出演中)
内山 悠里菜(スターダストプロモーションの声優部第2回オーディションに合格した期待の新人声優)





Interviewee

清水淳一(シミズ ジュンイチ)
作編曲家 サウンドプロデューサー ギタリスト
ゲーム会社勤務を経て独立、フリーに。フリーの作編曲家として活動する中でサウンド開発会社を設立。代表取締役に就任。今に至る。
キャッチーなメロディーラインのボーカル曲、印象的なシーンを作り出すBGMを書く事を得意としている。
自身の経営するサウンド開発会社は効果音制作が非常に強く、楽曲も効果音もハイレベルな制作ができることが市場の評価を得ている。

ココロノビートエンターテインメント WebSite
http://cbe.co.jp