LEARN - Soundelux USA U195


User Interview - 川瀬 健児





伝統的な87、47のサウンドを併せ持つコンデンサーマイク、Soundelux USA U195は、スタジオレコーディングのスタンダードマイクとしてのみならず、重要なコンサートのステージマイクとしても活躍しています。9月2日、グランドハイアット東京で行われた、EVENING WITH YOSHIKI 2017にて、Clair Japan Inc, FOHエンジニア、川瀬健児氏にその魅力を伺いました。


── 本日のセットアップを教えてください。

EVENING WITH YOSHIKI 2017は、YOSHIKIさんが弦カルテットと共にピアノを演奏するコンサートです。KAWAIのクリスタルピアノには、YAMAHIKOのピックアップと、アダプターを付けてバウンダリーにしている無指向のDPA4061、モニターの関係でサウンドホールの中に入れている4099、さらに下から狙ったSoundelux USA U195を加えた計8chを立ち上げ、これらをミックスして音作りを行っています。U195の87モード(FLAT)もスッキリしていて良いのですが、今回は音数が少ない上、高い周波数の楽器が殆んどなので、47モード(FAT)で使用し、ピアノのダイナミックレンジというか、主に音の幅を表現するために使っています。


── U195のマイキングにはどのような狙いがありますか?

ツアー最初の名古屋のコンサートでは、レコーディングのマイキングと同じようにU195 2本をピアノのサイドから置いて、最高に良いマイクだなあ、なんて使ってたんですよ(笑)。普段はこれが良いと思います。ただ今回は世界観を大切にしているピアノもフューチャーされています。いろんな角度から撮影もされているので、もう少しマイクの位置が低くならないか、とリクエストがあり、マイクセッティングを変更しなければならなくなりました。

ライブでのセッティングは、ピアノの上からマイクをオンで入れることをよく行うのですが、それに相応するマイクは、今回、既に仕込んでありました。ピアノを、オフで狙えないというのは結構難しいリクエストですけれども、ピアノの響板の下の響きのことを思い出して、U195をピアノの低音を支えるマイクとして下から狙ったところ、とても効果的だった!マイクの特性を生かすことができて、PA的にもどれくらい空気を入れるか、削げるかというところで非常にバランスよく収めることができました。




── PAでのエアー感のバランスをどのように考えていますか?

PAの現場では、オンマイクでなければ音を上げることがなかなかできません。けれどオンマイクの音は、楽器のすぐ近くに耳を寄せて聴いているのと同じですから不自然で聴きづらい。オフマイクがないと全体が鳴っている音、普段聴いている楽器の響きが拾えませんから、オンでもマイクの工夫で自然な曖昧さを表現するというのがひとつテーマになります。最近の小型マイクは、とても優秀で線も細くない。けれどもこれらのオンマイクでは、どうしても低い音がキレイに拾えず、デコボコするんです。オンマイクだけだと楽器が安っぽく聴こえることもあります。距離をとって狙いたい場合には、これらの反応の良い小型マイクは、周りの音を全部拾ってしまってガサガサしてしまうし、EQ補正してフォーカスを合わせようとしてもダメなんです。耳での聴こえ方と違うというか、紙の厚さのようなものを人間はなんとなく音で認識することができますが、それがあまり感じられない。それには異なるタイプのマイクを立てる必要があります。

マイク選択は、どうしても輪郭がクッキリと出るマイクを選んでしまいがちですが、実際の音いうのは、もっと曖昧です。U195は、コンデンサーマイクで感度が高くありながらも、耳が聴きたいものにフォーカスしていく感じというか、人間の耳の自然な曖昧さ(紙の厚みをとらえる繊細さでもあります)を表現してくれる。自分が実際に聴いて狙ったところのイメージが感覚的にずれていかない。
社内で、色々なマイクと並べてテストしたんですけど、U195は質感をしっかり感じさせてくれるので、みんなで、このマイクすごいぞ、となったほどです。先輩のエンジニアが昔、Neumann U87をPAに使っていて、その時のシンバルの厚さや質感がとても印象的でした。ライブサウンドでそこまでの質感を感じられたのは、その時以来、U195が初めてのことです。




──ラージダイアフラムのマイクは、どのようなものを使っていましたか?

昔からAKG 414が好きで使っていましたし、Audio Technica AT4050もPAの現場ではよく使われます。AKG 414は、HAを上げていくと、単一指向セッティングで使っていても指向性が広がっていく感じがするんですが、U195の場合には、同じように上げていってもそこ立っているかのようにそのまま上がってくるので、感覚的にイメージがずれていかない。これは、Schoepsのマイク等でも同じ印象があって、そういうマイクは総じて値段が高いんですよね(笑)。実際、”87”、“47”をPAで使うことはないですし、それこそ”47”なんて僕自身も良く知りません。ただ、47モード(FAT)の音を聴いたら、みんな好きって言うんですよ。なんですかこのマイクって(笑)。もう一つ、U195は、単一指向性という仕様以上に指向性が強い印象のマイクで、マイク背面の指向パターンの音の入り方や形がとても良い。マイクの背面にモニタースピーカーがあって、オーディエンスがいるPA用のマイクとしてこの仕様はとても扱いやすいですね。スーパーカーディオイドや、ハイパーカーディオイドなどでみられる後ろから音が入る感じも見られないんです。




──ピアノやドラムのオーバーヘッド以外には、どのような使い方考えていますか?

まずは、ギター、ベースのキャビネットです。ステージで4発コーンの入ったMarshallのギターアンプを使っていても、8発コーンの入ったAmpegのベースアンプを使っていても、実際にマイクで狙うのは、その中のコーンのひとつだけです。コーンが集まったキャビネットの出音を演出するのに、ここでも複数のマイクを組み合わせたりしながら、工夫してその音を作っていくわけです U195は、コンデンサーマイクですが、C414や、AT4050のように音が散らない。どちらのコンデンサーマイクもキレイで優れたマイクですが、キャビネットに使う場合には、音が混ざった時にいなくなってしまう。そこで最近では、ここにリボンマイクを使う選択もあります。ただしリボンマイクは双指向性なので、後ろに吸音を立てたりしながら、見栄えにも気を使わなければいけないという側面もあります。結局ダイナミックマイクだけで済ませてしまうとことも多くなってしまうので、ここはU195にとても期待しているところです。

PAでの音作りは、見栄えや、モニターなど、ステージ上の多くの制約の中で、機器の特性、マイクの特性、マイキングなどを駆使してイメージ通りの音を作っていきます。ミュージシャンは、レコーディングでさんざん音をつくってきているので、良い音を知っていますし、最近では、イヤーモニターが多いこともあって、そんな制約の中であっても求められている品質が、年々上がってきています。音の良し悪しは、絶対的な品質があるのかもしれませんが、その一方、音作りは相対的なものです。個別に良いものを等しく並べるだけではなく、上手に違いを出してコントロールすることが大事です。高域がギャンギャンしたシンバルでさえ、アクセントのところに丁度よく入ってくれば、気持ちよいものなりますし、オーボエのような独特な音色楽器も、うまく入ってくると情緒的な表現をします。U195は、PAで使われるコンデンサーマイクと変わらない値段で、このクラスのマイクでは得られなかった音色を持っているのが、一番の魅力だと思っています。新しいアプローチでの音作りにチャレンジできて表現の幅を広げられるのが何より良いですね。


Interviewee

川瀬健児
株式会社クレア・ジャパン エグゼクティブエンジニア
http://www.clair-japan.com/index.html