LEARN - Soundelux USA U99


Legend of Soundelux – Production Story

User Interview - Minimum Root (nowisee)





伝説のマイクロフォンブランド、Soundelux(サウンデラックス)。Bock Audio/Soundelux USAに引き継がれる、David Bockのマイクロフォンデザインに特別な信頼を寄せるプロフェッショナルは、少なくありません。ボーカルの魅力引き出すことに高いプライオリティーを置くトッププロデューサー達に選ばれる理由とはどのようなものなのでしょうか。 正体を隠した6人のプロフェッショナルから構成されるバンドユニット、nowisee(ノイズ)。24カ月連続リリースされたシングルの後編として発売されたばかりの2nd アルバム『re/ALIVE』では、ほぼすべてのボーカルレコーディングにSoundeluxのクラシックマイク達と、最新のSoundelux USA U99が採用されています。プロデュースとエンジニアリングを担当する、Minimum Root(ミニマムルート)氏に、nowiseeプロジェクトとSoundeluxマイクロフォンの魅力について伺いました。


── nowisee(ノイズ)とは、どのようなバンドなのか教えてください。

Strange Octave(ストレンジオクターブ)という女性ボーカルと、Minimum Root(ミニマムルート)である僕。Add Fat(アドファット)がギター、Turtle 7th(タートルセブン)がキーボード、Chotto Unison(チョットユニゾン)がベース、さらにアートワークスとMVを担当する残酷トーンを加えた6人組のバンドです。異色なものを組み合わせて、物語を軸にしたものをやろうと集まったので映像チームも含めたバンドになっています。日本は、一見、裕福に見えて、なんの問題もないように見えるけど、若い人の自殺者がもっとも多い国です。本当の意味の幸せを見失っている現代に生きる意味を問いかけ、自ら命を絶つという現実に対して警鐘をならすという、やや重たいテーマですけど、こういうことを伝えたいというメッセージをキーワードにして始めました。

最初、人は何で幸せを感じることができるのか?というテーマを、僕とMV担当の残酷トーンで話をしていて、寿命が永遠に続くことは幸せに繋がるのか?ということに、あーでもない、こーでもないと、想像力を働かせていました。永遠に死なないということは、自分にとって大切な人が死んでいくのを永遠に見届けていくことなので、いつか悲しみの方が多くなり、それが人間のキャパシティーを越えていく。大切なものがいずれなくなってしまうことを前提に幸せを感じることはなかなか難しい。そうすると、人間の最後の願望といわれる不老不死が幸せにつながるというのは少し違うんじゃないか?寿命があってやがて死ぬことを本能的に知っているからこそ、その時々の瞬間に感動したり、幸せに思ったりするんじゃないか?寿命は明日にも終わるかもしれないものなので、今、自分が何を思い、何を感じているかが一番大事で、それが例え小さいことでも、例えばブドウが美味しいとか、そんなことでも、そこに幸せと思うことができれば死ぬ必要なんてない・・・。そんなことを伝えたいからこそ、それを伝えるには終わりを決めて走るということに意味がある。24作で終了するプロジェクトを考えたんです。




── 実際の制作は、どのように行いましたか?

メンバーは、それぞれが全部できる人の集まりなので、その中のひとりがアレンジをきっちりやって、みんなでそれをなぞるという形では、音をせめぎあうバンドらしさが出せない。シンプルにやろうとすると、みんな譲り合ってしまってキレイに作ってしまう。それはnowiseeとして考えると違うし、全員、普段やっている仕事と変わらない。そこで、音で会話をするようにネットにデータを投げ合い、一ヶ月に一度だけミックスの日に顔を合わせるという流れで進めました。俺はこれを入れた、こんな曲ならこんな音を入れたい、ピアノを空けておいたので好きに弾いてくれ、これにギターをバンバンつけてほしい、という感じで、せめぎ合い、熱量をそれぞれがぶつけていく。全員が出揃った後、ここはピアノが美味しい、ギターが美味しいというところの交通整理を混沌とした世界に光の道筋を探すように作っていきました。

例えば、思いっきりロックな曲のとき、すごくエッジーな声になってしまった時は、”木を隠すなら森”じゃないけどみんなでガーンと音を足して行く。シンプルなところにエッジーな声があると、声の方を綺麗に処理して聴きやすくしてしまうけど、声だけが出っ張っている状態にしなければピークにはならない、そのくらい勢いでやっちゃってます。Octaveがメジャーコードのところにマイナーメロを歌ったことがあって、あれ?と言いながらも、カッコよかったので曲の方をコードごとマイナーに変えたりしたこともありました。MVも通常は、音を作って完結したものにMV監督がそれをどう感じたかを表現するけど、そこもnowiseeではMV担当もメンバーなので、“こういう音ならこういう絵の方が面白いよね”“こういう絵で表現したいからこういう音や歌詞”、といった具合にそこでもキャチボールが起きる。最後までメンバー内だけで完結しているんです。




── 24カ月を続けることで苦労した点はありますか?

普通のアーティストが、一年にシングル3曲、アルバム1枚と考えると、24曲のシングルというのは、8年分を2年間に凝縮することになります。一ヶ月にひとつシングルを出し続けると、ネタも尽きてきて過去作品との戦いになっていきます。今は浮かばないけど、ちょっと遊びに行って寝かしておいたらできるよね、という余裕がないので、とても苦しくて、しんどい。いつ何処で何をやっていても、アンテナがnowiseeのプロジェクトにどう生かせるのかという頭になっていって、15、6作目の折り返しの頃には、みんなノイズ病になってしまいました。外の仕事でシンプルな曲を作っていると、なんか不安になるんですよ。(笑)

── 途中まで、2017年4月に他界したスターリングサウンドのトム・コインがマスタリングを行っていますね。

映像から音までを全部自分たちで完結している中、トム・コインだけが唯一の部外者でした。トムには、nowiseeで扱うテーマも、2年続くプロジェクトということも、すべて最初に伝えて引き受けてもらっていたんですが、今考えると依頼した時には、彼はすでに自分の病気のことも知っていたし、2年間を彼自身が生きるつもりで引き受けていた。むしろ終わるまで生きていたいと思ったからこそ引き受けてくれたのかなと思うと、改めて自分たちが掲げたテーマについて深く考えさせられました。死ぬ間際までマスタリングデスクに座って音楽を作り続ける、そんな生き方が僕らにもできるかな、と。19曲以降のマスタリングを他の誰かに頼むことも考えましたが、結局メンバー内で相談してそれまでのトムのマスタリングを参考にして自分達でやることにしました。やはりこれだけは、トム以外の誰か、ではなかった。

── 印象的なStrange Octaveさんのボーカルはどのように収めていきましたか?

プロジェクトを始める前に、マイクテストで古今東西のマイクを20本くらい試しました。Neumann U67、U87Ai、Ela-M 251、Brauner VM1、Violet Design Flamingo、The Amethyst Standard・・・、思い出せないくらいの数です。レコーディングが始まってしまうとあちこち変えることができないので、いつも事前のマイクテストで3本くらいに絞っておき、そこから曲に合わせてブースに立ておきます。パンチや熱感があって歌詞がわかるもの、バラードの時にストレスがないもの、それ以外のレアケースに使うもの、これらに分けて選んだ3本が、Soundelux U99B、U99B改(U99Bにノイマンのヴィンテージカプセルを改造して搭載させたもの)、そしてU95でした。ワイドレンジなU99Bが基本で、U99B改はそのバリエーション。それよりも少し太く聴かせられるのがU95。Soundelux U95は、痛くなる時もあるけど、その痛くなるところが歌詞によって逆にうまく熱感として表現できる時がある。これはU99Bで録ったものをEQで後処理してもよいくらいの違いですけど、最初からその音のマイクでやると、レコーディングのときに歌い手がオケに歌詞をねじ込んでいける。これら3本は、いわばすべて67系の真空管マイクになるけども、SoundeluxのK67カプセルは、ローミッドの分厚い感じがピークをうまく吸収してくれて、思いっきりシャウトしても痩せないで録れる。nowisee全曲を通して他のマイクを使ったのは本当に稀で、アコースティックピアノと歌だけのところにEla-M251を使ったりしたくらいです。プロジェクトの最後の曲では、ちょうどその時リリースされたばかりの新しいSoundelux USA U99を使って録音しています。




──Soundeluxのクラシックマイク達は、どのようにして使うようになりましたか?

Butch Vig(ニルヴァーナのプロデューサー)が大好きで、彼がフーファイターズのレコーディングを行っている映像を見たときに、ボーカルレコーディングに見知らぬマイクが立っていて、それがSoundeluxのマイクでした。まあまあな近距離で立ってたんだけど、それがすごく熱感があるカッコイイ音がしていたので、自分でも同じものを探して買って使ってみたら、すごく感動した!それからSoundeluxのトリコになって、U99、E49、E47などのラインナップを一通り集めるようになりました。昔からのヴィンテージマイクも好きだけど、それは骨董価値じゃなく感動できる音を持った個体があったから。Soundeluxの魅力も、ヴィンテージマイクに似ていて安いからじゃなく、Soundeluxが持つ音の感動がすごかった。67を後処理することで同じようにできるかというとそうはならなくて、ギラつき方やエッジーな感じはU99じゃないと出せないものがある。僕がマイクに求めるものは、ボーカルの聴かせたい魅力を引き出す拡声器。1930年代のヴィンテージNeumann時代からマイクロフォンの役割は人の声をより心に訴え掛け、心を動かす音にすることにある。David Bockが作るマイクは、この“声に魔法をかける”というところを脈々と現代に引き継いでいる。より現代的な魔法を掛けてくれるのがSoundeluxなんです。

僕自身は、Soundeluxのマイクしか使わないってことはないけど、現代のJ-POP、J-ROCKは、音数が多いものが多いので、そういうところでマイクテストをすると大抵、U99が勝ちます。U99は、”67”をモダンに消化した感じで、歌を一歩前にして顔を出してくれる。経験からくる主観ですけど、日本語はオケの中での聴こえ方が違うので、J-POP、J-ROCKにU99を試すと奇跡的な何かが起きる可能性が非常に高い。日本語がよく聴こえるEla-M 251の C12カプセルの伸び方や、国産のSONY 800Gと同じような抜け方を持っていて相性が良い。67には、67の良さがあるけど、DAW時代の派手なオケの中では、“いなたく”聴こえてしまう。Soundeluxのマイクは、スペック以上にあるんじゃないかというほど耐圧に強く、声量のあるボーカルを近接でぶっ飛ばしても、ギターのピッキングで歪ませたように熱量として伝えられる。それでいて繊細なものが拾えないという訳じゃない。未だにマイクテストでマジか!というほど唸ることがあります。新しいU99もU99Bの特性をそのまま持っていて近接の感じも同じ。よりワイドな印象があるので、プロジェクトの始めに出ていればこちらを選んでいた。




──ボーカルレコーディングで気をつけていることはありますか?

人間は聴こえてくる音を頼りにパフォーマンスしています。歌い手が最高のパフォーマンスを行える状況を前提に考えたとき、派手なオケの中では、この音でやっておげば後が楽というナローなマイクでボリュームだけ上げて歌わすより、自分の声がオケの中で一歩前に聴こえるサウンドになっている方が、歌い方と歌詞の入れ方がまるで変わってきます。吐息まで聴こえると息の仕方までも変わる。これは間違いない。音楽を水の流れに例えた時、出来上がる作品が海だとしたら、川を遡って水に入る源流にあるのがマイクです。コンプより、マイクプリよりもマイクが重要。これが悪いとその後どれだけ頑張っても海が濁っていく。曲のコンペのときなんかも、楽器や声の音の良さはあまり関係ないようで意外とあって、歌が良くて声がカッコイイ音源で出すと人間心理的に曲がカッコイイと思ってしまう。自分が出している音源に対する説得力を真剣に考えるのであれば、U99に限らず“マイクを変えるだけでこんなに感動できる”というのは体験しておくと良いと思うし、10万円以下のコンシューマーレベルのマイクしか持っていないクリエータなら、マイクだけで10段階くらい音源のグレードを上げられると思います。僕自身は、U99を様々なマイクがある中でのレパートリーとして使い始めたけど、30万円のマイクとしたら確実に安いし、ヒット曲を当ててハイエンドなスタジオマイクを選べるようになるまでは、U99一本で全然問題ないと思います。

──nowiseeの活動の今後は、いかがですか?

このプロジェクトは、映画と同じくnowisee製作委員会を立てて、様々な企業のスポンサーの協力で行ったプロダクションなのでひとまずはここで完結です。音楽業界でキャリアのあるプロ達が、おのおのいつか一緒にバンドをやりたいと思っていた相手といろいろな流れで一緒になって、“今、自分が何をやって幸せか”という今回のコンセプトに吸い込まれるように歩調が揃ったことで実現しました。トムの悲報も含めて、擦り切れる思いのある大変なプロジェクトでしたが、24回のチャンスに賭け、自分たちのできる最高のものを作るということは達成できたと思っていますし、ひとつの奇跡のようにも感じています。



Interviewee

Minimum Root - nowisee
http://www.nowisee.jp/