LEARN - Soundelux USA U195


Vintage vs New Vintage Microphone Shoot-out

ヴィンテージ vs ニューヴィンテージ マイクシュートアウト

左から、Shure SM57, Neumann U87Ai, Soundelux USA U195, Bock Audio IFET, Neumann U47fet


世界にその名を知られるトップギタリストGod of Guitarこと藤岡幹大氏と、仮BAND(藤岡幹大guitar、BOH bass、前田遊野drums)を手がけるレコーディングエンジニア、佐川MIKEモトキ氏両名に協力いただき、ヴィンテージ/オールドNeumannとBock Audio/Soundelux USAのマイク比較テストを行った。ニューヴィンテージ コンセプトを浮き彫りするその結果と、話題の仮BANDの新アルバムについて話を伺いました。


アコースティックギター

アコースティックギターでのシュートテストは、マイクの種類とU195のモードを切り替えた二つのグループに分けてレコーディングされた。

グループ 1
Soundelux USA U195(Normモード)
Neumann U47fet (ヴィンテージ)
Neumann U87Ai (オールド)

グループ 2
Soundelux USA U195 (Fatモード)
Neumann U47 fet (ヴィンテージ)
Bock Audio IFET (Iモード)






アコースティックギター(ストラミング)




アコースティックギター(アルペジオ)







U87Ai (old) vs U195 (Norm)

佐川:U195の第一印象として、上から下までバランスよく拾えている、音の立ち上がりも速くてオケに混ぜても埋もれない存在感を録り音で出せるマイクという印象です。
藤岡:弾いている時の印象は変わらなかったですけど、録ったものを聴いてみると違いがありますね。U195の方がよりモダンで、オールドU87Aiの方が落ち着いている印象です。レンジ広くてパンチがある。シャキっとしてる。
佐川:シャッキとしているけど弦が揺れている感じをしっかりと拾えています。よりボデイが録れていて、上から下まで輪郭がはっきりしている。滲んでいないので、オケの中に入れても生々しい存在感があると思います。
藤岡:そういう混ざり方をしてくるでしょうね。単体で聴いてもそう聴こえます。コード感がちゃんと拾えているのが良いですね。
佐川:U87Aiはユーティリティープレーヤーとされているけど、U195の元になっているヴィンテージU87と比べると高域に癖があります。今日のU87Aiは、古い個体でほどよく滲んでいますね。
藤岡:普段のアコースティックギターのレコーディングでは、マーチンのOOO(トリプルオー)にスズが入ったフォスファーブロンズ弦を張るんですよ。もっと高域がキラキラするので、今聴いている感じより高域があると無駄なところが出てしまうかもしれない。



佐川:U195は、U87の特徴がありつつも重心が低い。上がしっかりしているだけじゃなく、下の方も色濃く録音されているところに違いを感じます。ローの量感がぼんやり、もっさり録れているのではなく輪郭がしっかり聴こえる。アメリカのモダンなミックスを作るには扱い易いですね。レコーディングで録れていない周波数は後でどうにもならないですが、これならば録音後の調理方法にも選択が持てそうです。選択肢はU87Aiよりも多いと思いますね。



U195 (Norm) vs U195 (Fat)

佐川:好き嫌いなところもあるけど、Normモードで使っていた方が、U87のようなニュートラルなイメージで録れます。アコギのストラミング(ストローク)は、コード感が欲しいときと賑やかしでジャカジャカ感が欲しいとき”がありますけど、Normではどちらにもいける印象です。
藤岡:Fatはだいぶローが出ていますね。ボデイの鳴りが強調されてるけどブーミーになる手前で止まってる。ソロギターの場合は、こっちの方がよいかなあ。アンサンブルでストロークをFatモードで録るとダボついていてうるさいですね。
佐川:なんにでも使えるマイクなんてものはないですからね。どういうふうに録りたいか、最終的にどういうふうにミックスしようかというイメージを決めてからマイクを選びます。僕はプレーヤーが出している音を聴いてから、その環境、弾き方、鳴りに合わせてマイクを選択します。このNorm/Fatスイッチはどう使いたいかで積極的に切り替えていけるとおもいます。



U47fet vs IFET(Iモード)



佐川:確かに似ていますね。
藤岡:ヴィンテージU47fetの方が自然ですね。
佐川:この自然さはヴィンテージの良さですね。U47fetの方がマイルド・・・・、なので実は使い所が難しいんです。今日みたいにアコギ一本なら自然で良いですが、オケの中に立たせると滲んで埋もれてしまう。普段はヴィンテージU47fetを使う時は他のマイクと組み合わせて使うことが多い。IFETは、オケの中で埋もれない輪郭やパンチ感がU47fetに足されている印象です。近くで聴いている感じも出ていて生々しい。
藤岡:IFETはコリッとしている、IFETは砂肝ですね。U47 fetは、もも肉ですかね。(笑)エレキギターでもレスポールにしかないコリッと感があるんですけど、それにすごく似ている。腰があるというか。このブーストされているところがもう少し強いとコォーっと鼻つまりに聴こえてしまうけど、ギリギリにところにうまく収まっている感じがあります。
佐川:ブーストしなければいけないところが最初からある。U47fetがよく使われるベースアンプにしてもバスドラムにしても低音を担う部分だし滲ませてはいけない帯域です。各楽器には役割がありますが、おのおのを扱い易い音ばかりにしていると本来鳴っている音像を伝えることができなくなってしまう。録る段階で素材としての輪郭が上から下までどうなっているのかというは常に考えていかなければならないし、モダンなサウンドを作るにはそれが大前提となります。このIFETも10年、20年と使っていくと枯れて行くかもしれませんが、この特性の狙いはそういうところだと思います。



エレキギター

キャビネットにShure SM57とSoundelux USA U195 を立て、U195のFat / Normモードを切り替えて録音された。

SM57+ Soundelux USA U195 (Normモード)
SM57 (単体)
Soundelux USA U195 (Normモード)
SM57+ Soundelux USA U195 (Fatモード)




エレキギター(クリーン)




エレキギター(ディストーション)





Shure SM57 + Soundelux USA U195 (Norm) vs (Fat)

藤岡:Normモードありきですね。フレーズによってFatモードは、ブーミーに聴こえる
佐川:今は、上から下までのフレーズ弾いていましたけど、歪ませてリフを弾いているときは、Fatモードは有効だと思います。ジャッと入れたときの量感がいい。
藤岡:コードをジャッと弾いたとき、Normは、プレーン弦のところがよく聴こえる。 Fatは、6弦開放をギュッと弾いているところがよく聴こえますね
佐川:リフはFat、AメロのバッキングはNormみたいな使い分けはありですよ。



Shure SM57(単体) vs Shure SM57 + Soundelux USA U195 (Norm)



藤岡:Shure SM57単体だと地味だなあ。すげー地味になっちゃった。これを聴くとU195を足している方が断然いいですね。SM57だけだともっとコンプとか、リバーヴとかも足さないと聴いているのもキツイ。もっとギターを重ねたくなるし、録れたけどここからどうしよう?という感じがすごくする。
佐川:SM57は瞬発力があるのでギターのパンチ力を表現できますけど、単体ではブースの音が録れているとは言えないですね。
藤岡:SM57一本だけだとダメだ、聴いていられない。(笑)SM57だけだとローの部分での輪郭が全然わからない。U195が足されると飽和しそうだけどしないコンプ感やアンビを足したかのような感じがある。
佐川:U195の低域に輪郭があって音圧があるからだと思います。特にディストーションの方は、周りの空気感が足されるので、アンプで音が暴れている感じがプラスされる。ピッキングの瞬発力をSM57、ローの音圧と輪郭をU195で拾えていて、ブースの中で鳴っていたままのイメージが録れています。
藤岡:この2本の組み合わせならコンプとかの処理も必要最低限で良い感じ。SM57とU195のミックスのバランスを5対5とか、3対7とかにするだけで調整できるような気がする。
佐川:エレキギターの録音は、パンチと音圧をどうやってキャプチャするのかというところが大事なところなんですけど、それがSM57とU195でズバッと録れたというのは驚きですし、僕にとっても大きな収穫です。


総評



藤岡:どちらもヴィンテージNeumannと比べて遜色がないですね。
佐川:特性的なものは大きく似ていて、U195やIFETはもっとディテールまでしっかり録れている印象です。ミキオさんは、自分でアコギを録ったりしますか?
藤岡:家に安いコンデンサーマイクがありますけど、アコギをコンデンサーマイクで、となればスタジオに行って録ってもらいます。いつもスタジオにあるNeumannのマイクを立てているんだと思いますけど、今日のU195は、普段スタジオで聴いている印象と同じですよ。
佐川:僕は、安いコンデンサーマイクを色付けしたいときにあえて組み合わせで使ったりすることがあるんですよ。安いコンデンサーマイクは、音は録れるんですけどハイとかローに変な癖が付いている。それでいて芯が録れない。そこをうまく芯の録れるマイクと組み合わせてユニークなキャラクタを狙ったりするんですけど、安いマイク単体では芯が欲しくて近づけるとブーミーになって、今度、距離とってマイキングすると芯が録れない。後でEQしても何も出てこない。それでいったら、U195は輪郭と芯がしっかりあって、近づけても離しても自然に録れるバランスの良いスタジオマイクという印象です。

仮BAND
藤岡:仮BANDは、僕がやっているセッションバンドで、ベースのBOH、ドラムの前田遊野と3人でゆるく始めました。仮のままやっていたので名前が、“仮BAND”。スケジュールの合間を縫ってしか活動できないので、ライブもまだ3回しかやっていない。メンツとコンセプトは決まっていたので、モトキさんにエンジニアをお願いしてレコーディングしました。今度、6曲入りのアルバムでリリースします。曲名を考える暇がなかったのでアルバムタイトルも“仮音源”ってタイトルなんです。(笑)
佐川:ライブもソールドアウトでしたね。仮のバンド名、仮のタイトルでジャケットもまだ載せていないのにアマゾンランキングのかなり上位にありましたよ。
藤岡:数日前にジャケット撮影はしました。(笑)基本的に3人でやっている雰囲気を残すといったイメージのレコーディングでした。ドラムがすごくよい音でパーンとなっているからいいや、みたいな感じで進みましたね。
佐川:プレーヤーの出している音が良いことは、エンジニアとしては言い訳が効かないのでプレッシャーなんです。ミュージシャンが演奏している音、ブースの中で鳴っている音に忠実に生々しく録ることを基本に収めて行きました。
藤岡:普段の仕事とは違う、そういう気持ちで叩いているので、遊野のドラムセットもいい音をしていましたね。リズムがしっかりしていると、ギターとかの上物はぐちゃぐちゃやっていてもいい感があるんですよ。
佐川:そんな気持ちで弾いていたの?(笑)
藤岡:自由行動させられているときは、オラーって。お仕事のときは丁寧に正確にやっています。(笑)
佐川:自由には弾いていたけどね。いい意味で整合性がないバンドでした。“お互いが主張しあう整合性がないバンドがジャムセッションからどうにか作品にすると、こうなる”という音が聴けるというアルバムだと思います。
藤岡:全員オレを聴けー!という感じのアルバムですね。(笑)



PROFILE

藤岡幹大
1981年、淡路島生まれ。2007年、自身のバンド「Trick Box」でメジャーデビュー。現在は、ジャズ、メタル、ポップスとジャンルを問わないオールラウンドギタリストとして、様々なメジャーアーティストのサポートをこなす。また、ギター講師として累計10万部以上を売り上げる「アドリブギター虎の巻」シリーズなど、数多くのギター教則本を執筆。2017年4月にBOH(bass)、前田遊野(drums)らと「仮BAND」を結成。ベルウッドレコードよりミニアルバム「仮音源」が発売される。

http://bellwoodrecords.co.jp/label-products/5028


佐川 Mike モトキ
Rec, Mix, Live PA エンジニア。米国ロサンゼルスにてキャリアをスタート。ジャズ、フュージョン、ロックなど、様々なジャンルのワールドクラスアーティストのセッションに参加。プレイヤー、ソングライティング、制作ディレクタなどのバックグラウンドを併せ持ち、独自の感覚で国内外アーティストのサウンドメイクを手掛ける。世界を照準としたバンドレコーディングとそのプロセッシングは国内のみならず、海外アーティストからも定評がある。

http://smooth-foundation.com/