LEARN - Soundelux USA U99


Reviewd by 門垣良則 - Soundelux USA U99 TUBEコンデンサーマイク





近年製造されるマイクロフォンのその多くは、ヴィンテージのサウンドを意識しながらもレコーディング現場で要求される機能向上を狙った製品がほとんどです。レコーディング現場で必要とされるサウンドには、例えば、マイクプリアンプにおける、数多く作られているNEVEタイプの製品があるように、比較的明確なクオリティやキャラクターが一定で存在しています。U99がインスパイアされたというU67は、非常に豊かなミッドと魅力的かつ柔らかなトップのサウンドを持つ、世界中のレコーディングスタジオで今も愛用され続けているヴィンテージマイクロフォンのひとつです。5月にリリースされたばかりの最新Soundelux USA U99を、弊社所有の(旧)Soundelux U99B、ヴィンテージNeumann U67と比較しながらサウンドチェックを行いました。

まず率直にそのサウンドクオリティと実用性の高さに驚きました。フラットなセッティングが非常に秀逸で、ヴィンテージマイクロフォンに求めるサウンドの重厚さや艶をとてもバランスよく感じることができます。このセッティングだけでも本当に価値のあるマイクです。弊社のスタジオ、MORGには、デビッド・ボック氏自身が所有していたシリアル番号50の(旧)Soundelux U99Bがあります。非常にレスポンスが速く、繊細でありながらも力強いサウンドは、いかなるラウドなサウンドの中でもボーカルを輝かせてくれ、ヴィンテージのU67や269と比較しながらも一時期は、ほとんどのセッションでU99Bを使用していました。新しいSoundelux USA U99は、この(旧)Soundelux U99Bの持つキャラクターに加えてわずかにU67に通じるミッドの押し出しがプラスされている印象です。

このU99には、U99Bにはなかった様々な追加機能が搭載されています。まず低域をコントロールするFATスイッチですが、これをオンにするとボトムに厚みが出て、U47やPultecのEQで煽ったような一部の製品でしか成し得ない厚みを得ることができます。この質感を支えているのは恐らく新たに設計されたパワーサプライにあるのではないかと感じました。微細な信号を増幅するマイクロフォンにおいて、不純な信号を含まずに増幅させることは、ローエンド、ハイエンドの質感に多大な影響を与える重要なポイントです。弊社でも実験を重ね、スイッチング電源を使っているTUBEマイクロフォンに対しては、パワーサプライに改造を施して使用しているほどです。美しい筐体も魅力のU99のパワーサプライは、実際に手に取るとあらゆる高級マイクロフォンの中でもトップクラスのパワーサプライであることを感じ取れると思います。





加えて高域のブースト、アッテネートのスイッチがあります。これらは想像よりもかなり強くキャラクターを変化させます。低域のFLAT/FATスイッチと組み合わせることで様々なサウンドバリエーションが得られました。FLATモードで高域をブーストすると、AKG C12やEla M 251タイプのクローンに感じられるクリーミーな高域が得られ、FATモードで高域をアッテネートするとE49を思わせるサウンドが得られます。強いキャラクターの変化なので初めは戸惑うかもしれませんが、その分ソースに合わせて迷いなく直感で判断が出来るはずです。

これらのサウンドバリエーションには大型のトランスとNOSのEF732管が大きな影響を与えていると思われます。EF732管は、(旧)Soundelux E47、E49でも採用されており、その他多くの高級マイクロフォンでも採用されています。むしろ筆者にはEF732でU67のテイストを再現できたので、いっそ回路の近いE47やE49のキャラクターをスイッチで切り替えられるようにしよう、どうせなら高域のブーストもつけて251ライクなサウンドアプローチも加えてしまおうという、デビッド・ボック氏のインスピレーションがスイッチ機能として盛り込まれたものと感じました。

最高のコンディションを保持しているヴィンテージマイクロフォンは、ソースにハマると他では得ることのできない素晴らしいサウンドを得ることが出来ます。弊社でも非常に状態の良いヴィンテージU67と、90年代にリイシューされたU67を所有していますが、求められるサウンドに対してはヴィンテージではなく近年のマイクを使用することも少なくありません。ヴィンテージマイクは、使用頻度やメンテナンス状況による個体差の問題が永らく問題にもなっています。レコーディングのシステムやハイレゾ配信などレコーディングを取り巻く環境が大きく変化している中で、求められるサウンドと結果を強く意識し、非常に実用的な機能を加えたU99は、近年のマイクロフォンにおいてベストな選択のひとつだと確信します。ハイレベルなサウンドに止まらず、その中にも遊び心が感じられるエキサイティングなマイクロフォンをプロデュースするデビッド・ボック氏に尊敬の念を隠せません。



REVIEWER

門垣良則: WAVERIDER所属、サウンドエンジニア、プロデューサー。関西にその名を知られるトップクラスの機材密集率を誇るMORG STUDIO主宰。新旧のレコーディング機材の造形が深く、自社でオリジナル機器の開発も行う。2017年5月、WAVERIDERの自社スタジオ catapult studioを東京都内にオープン。

WAVERIDER: waverider.jp
MORG STUDIO: morg.jp