History

660/670 リミッターは、レイン・ナーマによって設計され、最初の10台は彼自身の手によって作られました。1台目のユニットは、ジャズ専門のレコーディング・エンジニア/プロデューサーとして知られる、ルディ・ヴァン・ゲルダーのために製作されました。(レインは、彼のためにカスタムのレコーディング・コンソールも製作しています。) 2台目の660は、ニューヨークのオルムステッド・レコーディングのために作られ、そして3台目は、マリー・フォードとその夫であるレス・ポールのために製作されました。レインは、Gotham Recordingで働いた後、何人かとGotham Audio Development Corp社を設立し、新しい製品群となるAmpex 300のアンプを製作しました。レス・ポールが、レインのことを耳にするようになったのもこの時です。Ampexから新しい8トラックのレコーダーを受け取ったレス・ポールは、それが2トラックのモデルの完成度に遠く及ばないものであると気づき、レインにマシンの不備を改良するよう電話しました。



Gotham Audioは程なくして資金不足により倒産しました。様々な人たちがそこから抜け出そうとしていたことから、レインは自身の会社、Rein Narma Audio Development社を設立し、ニュージャージーのベルゲンフィールドにある自宅で仕事を続けました。その後、レインは実業家、シャーマン・フェアチャイルドからの誘いを受け、ニュージャージーのウェストウッドでFairchild社のチーフ・エンジニアとして事業に参加するようになります。660/670 リミッターは、100ドルでFairchild社にライセンスされ、およそ30台から40台製造されました。



レインは、リミッターのI/Pに20dB以上のヘッド・ルームを持つよう設計しました。670は、レコード・カッティングのためのリミッターとして造られ、LAT/VERTモードのスイッチを搭載していました。彼がFairchild社を離れると間もなくして670は生産中止になりました。レインは、Ranfertone、Ampexのサービス会社を渡り歩いた後にGeneral Instrument社で20年間働きました。レイン・ナーマとレス・ポールは、2007年のTECアワードで改めて紹介されることとなり、もっとも高く評価されたコンプレッサーの発明者として表彰されました。1,500ドルで販売されていたオリジナルのFairchild 670は、現在、スタジオでの多様なシチュエーションに使うことができる「アウトボードの聖杯」と称され、59,000ドル超える価格で取引されています。

Fairchild 670 Serial Number 44

このステレオ・ユニットは、20基のバキューム・チューブ、11基のトランスフォーマー(二つのインダクタ、二つのトランスを含む)を積載する65パウンドのモンスター・ギアです。1963年製造のこのユニットはすべて手配線で造られており、コントロールI/P、コントロールO/Pのトランスフォーマー、パワーサプライのキャパシタ、マトリックス・スイッチに接続されている内部結線のすべてが再ワイヤリングされ、新しく置き換えられています。また、ゲイン・リダクション段のカップリング・キャパシタ、真空管ソケットを含めた、O/P段のコンデンサも同様の処置が取られています。