Single Micing Technique

シングル・マイキング・テクニック


アコースティック・バンドで演奏することの大きな喜びのひとつは、他のプレイヤー達と集まり、一緒に演奏し、緊密なアコースティック空間の中で楽器と声の共鳴と調和の全てを感じられることです。より大勢のオーディエンスの前でその親密なサウンドの拡声が本当に必要になる場合には、伝統的なブルーグラス・スタイルのシングル・マイキングの手法に則って、中央にセットしたマイクの周りに集まって演奏することでアコースティック・バンドの本質を保つことができます。




Jason Mraz & Raining Jane with Louise



多くのアコースティック・プレイヤー達は、このアプローチを実践するにあたり現代のPAシステム/サウンド・エンジニアとの間でいくつかの問題に直面します。その中のひとつは、”音量に対する期待”の問題です。伝統的にシングル・マイキングの技術は、アコースティック・パフォーマンスよりも少し音量を大きく、大きなホールでもバンドの演奏が聴き取れるようにする手法として生まれました。増幅されていない楽器の音量に慣れていた当時のオーディエンスに対しては、生音より大きい音量で聞かせるだけで十分な意味がありました。しかし、近年では、多くのエンジニア、そしてオーディエンスでさえも、実際の音よりもはるかに高い音量レベルをライブ・パフォーマンスに期待するため、その音量を達成できないシングル・マイキングの手法に対しフラストレーションを感じることがあります。シングル・マイキングのステージを実現するにあたり、Ear Trumpet Labsのマイクロフォンは大いに役立ちますが、最高の結果を得るためにはそこで生じる制限といくつかのセットアップ方法のテクニックを理解することが重要になります。




理解の最初のポイントは、マイクと楽器/声の距離が全体のシグナル・チェーンの最初のゲイン・ステージに相応するということです。音の減衰が起きる事象として – サウンド・レベルは、楽器そのものがある位置よりも、マイクに届いた時の音(マイクがある位置)の方が常に小さく、マイクから楽器の距離が離れていくとその距離の2乗で音量が低下していきます。そのため、片足、6インチ(15センチ)離れると2倍小さくなり、2フィート(60センチ)離れるとさらにそこから2倍小さくなります。PAで、楽器直の信号レベルと同じ信号レベルを、楽器から離れているマイクで得るためには、プリアンプで減衰した分のゲインを補ってあげる必要があります。ここで重要なことは、PAのステージの音(メインとモニター)のレベルが同じであると仮定して、立てられたマイクがそのような追加ゲインをフィードバックなしに伝達できる状態を確保することです。

マイクから遠ざかるほど、フィードバックを起こさず同じ音量を得るのが難しくなります。したがって、もっとも初歩的でありながらも最善となるテクニックは、マイクに近い距離を保てるようプレイヤー達がお互いに注意を払ってシングル・マイキングに寄り添うことです。特に、ボーカルがメインではないインストルメンタル・バンドの多くが、シングル・マイクを高くセッティングし過ぎて、ギターやバンジョーなどの楽器からマイクを不必要に遠ざけてしまっています。すべての楽器のバランスが取れるように各楽器からマイクまでの距離を確認し、その距離を可能な限り短くするようにします。片足分の距離であっても音量に大きな違いが生まれます。




Brandi Carlile with Myrtle


フィードバックをコントロールする最善の方法は、マイクの指向性パターンを利用することです。EdwinaやLouiseなどのEar Trumpet Labsのマイクは、ほとんどのラージ・ダイアフラム・コンデンサーと同様にすべてカーディオイド・パターンになっています。Ear Trumpet Labsマイクの主な利点は、指向性のパターンが全周波数範囲にわたってコントロールされていることです。カーディオイド・パターンのマイクでは、マイクの中央30度の感度が最大になり、次の30度(真正面から60度)で、レベルは-3dB低下します。マイクの側面(90度)ではレベルが-6dB、または半分にまで低下し、そこから急速に低下していきます。マイクの裏側に向かってさらに30度ほど回り込むと、感度ははるかに低くなり、真後ろで最も低くなります。シングル・マイキングのフィードバックと戦うためには、楽器に向けられたマイクの表側の感度とスピーカーからの回り込みを受ける裏側の感度との間で取れる最大のコントラストを見つける必要があります。そのため、プレーヤー(楽器)がマイクの前面、60度の円弧内にすべて配置されることを理想とし、最も音量の大きい楽器をマイクの横に、最も小さな音量の楽器を中央に配置します。バンド側から見て、マイクをメイン・スピーカーより後ろ側に配置し、できる限り距離を保ちます。そしてモニター・スピーカーはマイクの後ろ側に少し離して設置してください。その際、モニターを右下(マイクスタンドの隣)に置かないよう気をつけてください。






最後に気をつけなければならないのは、ほとんど制御不能な要因となる部屋の反射と跳ね返りです。マイクに入り込むPAからの音の全てはフィードバックの原因になる可能性があり、低い天井やメイン・スピーカーの裏側にある反射性のある壁もその要因になりえます。これらは、ステージのカーテンや背景幕などで抑えることができるほか、マイク自体の角度を少し上げたり下げたりしながら、問題のある壁面からのピーク感度を遠ざけることで回避できる場合もあります。





シングル・マイクのテクニックは、暖かくコヒーレントなアコースティック・サウンドを大勢の聴衆に伝える意味において、実に取り組みがいのある手法です。ここに一般的なスタジオ用ラージ・ダイアフラム・コンデンサー・マイクを使用するケースも見られますが、ライブ・ステージで必要とされるフィードバック耐性を持たないこれらのマイクの多くは問題の原因になる場合があります。また現代のスタジオ・コンデンサー・マイクは、音響調整が施されたスタジオ環境で有益となる高域特性を備えていますが、その誇張されたサウンドは、ステージでのフィードバック・コントロールを難しくさせるだけでなく、実際のところあまり自然に聞こえません。Ear Trumpet Labsのマイクを使って、以上のようなポイントに注意しながらシングル・マイキングを練習し、これが上達してくると素晴らしく自然なアコースティック・サウンドと共に、ステージで効果的なモニタリングと想像を超える十分な音量を確保できるようになります。


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