LEARN - Edwina / Edna



Edwinaユーザーインタビュー

弦の音色とマイクロフォン

作曲家・編曲家 / ギタリスト 堤博明


卓越した演奏技術を基盤にサウンドトラックに新しい風を送りこむ注目の作曲家・編曲家 / ギタリスト 堤博明氏は、Ear Trumpet Labs / Edwina ユーザーです。現在放送中の『からかい上手の高木さん』でも大活躍したというEdwinaコンデンサーマイクロフォンの魅力を、都内某所に構えられた新スタジオにてお伺いしました。



──近頃は、どのようなお仕事をされていましたか?

昨年は、アニメ『クジラの子らは砂上を歌う』の劇判を作曲させていただいていて、ドイツのポツダムにある映画スタジオのスコアリングステージでオーケストラをレコーディングしました。海外レコーディングは、自分には初めての経験だったので驚きの連続でしたね。手紙みたいな感じで自分の狭い部屋で書いてきた音符がドイツのオーケストラで再現されていく。その状況が信じられなくて鳥肌が立ちました。すぐにプレイを冷静に判断しなければいけない状況だったので、その感動も一瞬のこととなってしまいましたけど(笑)。現在、去年から制作を行っていたタイトル、アニメ『からかい上手の高木さん』と、CX系ドラマ、『隣の家族は青く見える』で作曲したものが放送されています。


──Edwinaマイクロフォンはいつ頃から使い始めましたか?

Edwinaは、昨年の夏あたりに導入して、マイクの特性を見ながら使い始めていました。『からかい上手の高木さん』で大きく活躍しまして、今ではうちのメインマイクになりましたね。この作品の登場人物は、中学生ということもあって作るフレーズや音に大人っぽい色気を持たせたくなかった。素っ気なさはあるけど温かみと愛嬌は欲しいという難しいバランスのイメージですけどEdwinaの素直な音がこの劇伴にとてもマッチしていて、すごい、これで録ればいいじゃん!とハマったんです。


──Edwinaを、どんな印象のマイクと捉えていますか?

弾いたものものをそのまま録れるけど大雑把ではない、良い意味で変な色付けがない上品なマイクですね。マイク特有のサスティーンが残り過ぎないし、弦楽器に対するスピード感というか、立ち上がりの速さがすごく良いです。このマイクで録れる”弦楽器の弦が弾ける感じ”というのは、他のマイクでは出そうで出ない。ぺったりしていないし、かといってジャリッとした感じとも違う。ギターはピークがすぐあって減衰するので自分の演奏の仕方によってちゃんとグルーブをコントロールできる楽器です。それに答えてくれるマイク。ダメなプレイすると顕著に反映されてしまうので演奏もシビアになりますが、自分の演奏と向き合える、仲良くなればすごくよい相棒になってくれるマイクですね。





『からかい上手の高木さん』の劇判でも当然のごとくギターがたくさん入っていますけど(笑)、マンドリンなどの他の弦楽器も入っています。新たにマンドリンのFタイプを購入し使いました。マンドリンもEdwinaだととても可愛らしく録ることができるんですよ。それ以外にも、バンジョー、マンドリンセロ、スパニッシュリュート、そして少し前からバイオリンの練習も始めていたんですが、さすがにフレットレスバイオリンを弾けるようになるには途方もないなとなりましてピチカート用にフレット付きのバイオリンを作ってもらって、これを自分で弾いたものを少しずつ録って使っています。今回、特にフィーチャーした楽器が、アルトリコーダーとソプラノリコーダー、鍵盤ハーモニカ、そしてバス鍵盤ハーモニカで、どれも作品の舞台となる小学校、中学校とかの学校生活で馴染みのある楽器です。バス鍵盤ハーモニカも今回、新たに購入した楽器なんですけど、チューバみたいなサウンドが得られて情景がよく見えるんです。これらの録音にもEdwinaはとても使い勝手が良かったですね。


──他にはどのようなマイクを使いましたか?

EdwinaとリボンマイクColes4038の相性がすごく良くて、これらのいいブレンドを探して使うというのが多かったですね。リボンマイクはずっといろんな機種を探していて最終的にColes4038を選びました。このマイクは、ハイエンドはないんですけど艶があって楽器のよい帯域がしっかり録れる。Edwinaとの相性、組み合わせがとにかくすごくよくて!位相感がズレないように気をつけながらちょっとした低音感、深さ、質感を楽曲やイメージに合わせてマイキングしていきました。アンサンブルがたくさん鳴っている時はEdwina一本でも良いですが、ギターソロやマンドリンが主役で編成が薄いときは低音成分をうまくサポートしてくれます。





──以前は、アコースティックギターの録音にどのようなマイクを使われていましたか?

スモールダイアフラムのNeumann KM184を主に使っていました。ギタリストとして外のスタジオで立てられるマイクも大抵Neumann KM184かU67だったんです。最近は、ギタリストでいただくお仕事もここのスタジオで録ることが多くなりました。今は重点が作曲になっているので、人の曲を演奏させていただくことはいままで以上にとても光栄に感じられますし、勉強になります。演奏がメインだった頃は、ギターをどれだけうまく弾けるか、ということばかり考えていましたけど、作曲家の視点になると音の間引き方だったり、一音の説得力、音色というところの比重がかなり大きくなります。プレーヤーの視点とは違う部分もあるので、自分の中の矛盾と苦労しながら向き合っていますが、そこが大事と気がつくとマイク選びを拘るようになりましたね。導入した頃はちょうど作曲の仕事が増えていったところでもありました。


──新しいスタジオの環境は作曲にも関係がありますか?

完全にフィーリングですが、好きな街に住んでいる方が作曲モチベーションが上がるので、近年は一年ごとに引っ越しをしてお気に入りの街を探しているんです。引っ越しは、僕が曲を書くために必要なことですね、自分に刺激を与え続けるために(笑)。このスタジオは、以前よりやることのフォーカスも定まってミニマムでシュッとしています。楽器録音も効率的でとてもよい感じです。変わるって素敵だと思うんです。怖いことでもありますが、何事も滞るよりはどんどん変わっていこうと思って様々な事に向き合っていますね。



ミラクルバス
http://miraclebus.com/

堤博明
http://miraclebus.com/composer/hiroakitsutsumi