LEARN - OLLA - Hybrid D.I Box



ユーザー・インタビュー

サウンド・エンジニア 福原淳人(ブルーノート東京)



Burnie Grundman Masteringのマスタリング・エンジニア、Scott Sedillo氏がハンドメイドで製造しているPueblo Audio / OLLA - Hybrid D.I Box(オイヤ・ハイブリッド・ダイレクト・インジェクション・ボックス)。クリスチャン・マクブライドを筆頭するトップ・ベース・プレーヤー達からの支持を集めるこのマスタリング・グレードのD.Iは、サウンド・エンジニアの視点からどのようなアドバンテージを見いだせるのか。OLLA - Hybrid D.I Boxをいち早く導入し、実践投入している南青山のジャズ・クラブ「ブルーノート東京」のサウンド・エンジニア、福原 淳人氏にその魅力と使用方法を伺った。



──OLLA Hybrid D.I Boxの率直な印象とはどのようなものですか?

他にはないクリアさですね。自然に音が抜けてくる。それと楽器が持つピーキーな部分もダイナミクスある音色として聴かせてくれるので余計なEQをせずに残せるのが良い。従来、D.I.が必要になるソースに対しては、このダブルベースは中域が膨らむな、このメーカーのピエゾはこの帯域が潰れるな、など、EQやダイナミクスの処理が必要だという感覚がありました。どうしてもピークに聴こえてしまうと処理したくなるのですが、OLLAに差し替えるとニュアンスが変わってきます。
例えば、今までEQ処理が必須に感じていたプレゼンスが痛々しく聴こえるキャラクタのアコースティック・ギターも、OLLAに差し替えてみると、もちろんその周波数帯域は存在するのですが、音色として全く気にならなくなり、使える音になります。他にも、特有の帯域が強めの楽器を単体で聴いていてもOLLAではピーキーに感じず、むしろそれがカッコ良い音にすら聴こえるんです。広いヘッドルームがそうさせているという認識が正しいかはわからないですが、シンセでもピエゾでもOLLAだと余裕があるというか、生音で感じられる気持ち良さに近いニュアンスが感じられます。

もうひとつOLLAには、エレクトリック・ベースやダブルベースのピックアップで使う際に決定的に優れている部分があって、D.Iのパラアウト(THOU OUT)が音痩せしません。ここに来るベース・プレーヤーから楽器をアンプに直で挿したいという要望がよく出てきます。こちらの都合でラインが欲しいとき、従来のD.Iを差し込むとアンプ側の出音が痩せしまっていて、しばしば問題になることがありました。OLLAだとアンプで鳴らす音も良く出せるし、もらうラインも良い。皆がハッピーになれる、エンジニアとアーティストとの信頼関係が築けるD.Iなのではないでしょうか。長年、「音痩せするなあ」と思われながらラインをもらいに行っていたことを考えると、これは本当に良かったなと、大きな発見でした。





──どのような用途で使うことが多いですか?

エレクトリック/アコースティックを問わずベースやギターは勿論、マンドリン、シンセ、B-3のラインアウトにも使っています。シンセ・ベースもとても気持ち良いですね。アナライザで見ても周波数が変化している訳では無いのに量感があり抜ける。Pueblo Audio のS/Nの良いJRプリアンプを試した時にも共通して感じたのですが、ミックスの時に余計なことを考えなくてよくなる。普段であれば、音が増えていくとミックス上で濁る部分を先回りして整理していかなければ、という意識が働くところでも新しい音が足される気持ち良さが得られました。余計なことを考えず気持ちよくフェーダーを上げて行ける。良い音がくると意識も音楽的になりますね。OLLAは本当に繋げて悪いソースはひとつもないので、できればステレオで揃えて使っていきたい。今度はOLLA-4(ラックタイプの4ch OLLA)を導入したいですね。


──ステレオ・ソースに対してどのようなポテンシャルがあると考えていますか?

シンセ/サンプルは勿論、シーケンス・トラックを受けるD.Iとしても最高だと思います。マルチトラックのシーケンスを鳴らす場合に8〜12chとかで音を分けてもらうことがあるのですが、同じD.Iを並べそこから卓でミックスすると癖が合わさる影響か、まとまっていた時と音質が変わり、抜けなく感じます。様々な種類のD.Iを組み合わせるのも有効でしたが、そもそもOLLAで受けていたら問題にならないと思います。シーケンスを複数チャンネルに分ける必要は現場によってあると思うので自分の出力に責任を持つという意味において、OLLAをマニュピレーター側の出力ツールとする考えがあってもよいと思いました。





──OLLAのモード設定はどのように選択されていますか?

アクティヴ、パッシヴどちらも特定のキャラクタが付くことはなく、OLLAのクリア感は共通しているので、ノブを回して一番よいところにしようと思いつつ最初は大体アクティヴ2Mにしておきます。サウンドチェックが始まってみるとすでに良い感じなので、そのまま使っていることがほとんどです。グランドを切り離したい時にパッシヴ・モードのリフトに切り替えることもありますね。アクティヴ45Mはピエゾ用かと思っていたのですが、何に使っても大丈夫です。楽器によっては、切り替えてもあまり変化のない時もありますが、変えて良い時はそちらを選ぶようにしていますね。「スピーカー・モード」もプレーヤーがステージに密集している時は有効な手段ですね。様々な用途に使える素晴らしいD.Iです。



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